レコードを聴くという事
1990年代あたりから私にとっては35年間くらいレコードが音楽再生の主要メディアだったが、2015年以降はもう止めた。理由はカートリッジの価格の高騰だ。2000年にはいって数年はまだ10万円内外で使えそうなカートリッジがあったがそれ以降30万円以上のおかしな値段が付くにつれ、嫌気がさしたのだ。
1980年代から始めて30年ほど趣味にしたアナログレコード再生をもう止めてしまったが、これから若い人達がレコード再生を始めようというのも反対である。
レコード再生はアナログの中でもかなり注意する点が多く、できれば手取り足取り教えてくれる人がいる方がいい。よほどの財産家でもなければ今そんな事が出来る人がいるんだろうか。
私が始めた頃には製品もたくさんあった。解説書も分かりやすいものが出ていた。周りの家電量販店が元気で中にはアースの取り方から細かく教えてくれる人もいた。今そんな店も人もいないだろう。
畳の間に置いて歩いて近づくと針がポンと飛んでしまうようなレコードプレーヤーで本来の良いアナログの音が楽しめるわけがないのである。やたら高価ではなくともしかるべく考えられたプレーヤーを注意深く設置しないと宙に音像が定位するような音は得られない。
フォノイコライザアンプだけは割と安価(でも10万円~20万円はする)で使えそうなものが出てきたが、プレーヤー本体は選択の幅が狭い。使い物になるメーカーは数社だろう。そして問題なのはやたら高価になったカートリッジだ。
アースの取り方にしても以前はアース棒2本も庭に刺して慎重に設置すれば良かったが、今は仮想アースまで使わないとどうかなと思ったりする。携帯電話や無線LANの電波が飛び交っているからアナログの前世紀より状況は悪いだろう。ゼファンあたりが使っているのは必要だからだろう。
今の状況ならば本格的にレコード再生を一から始めるよりはデジタルで良い音を目指す方がよほど効率が良く、また趣味としても充実するのではないかと思う。だから
新規にアナログレコード再生を始めるのは薦めない。始めても十分アナログのメリットがあるところまで行く前に止める事になると思うからだ。自分の好きなカートリッジを使っていい音を出そうとすると、今の時代途方もないお金がかかる。
また逆にアナログオーディオはそんなしみったれたものではないし、10万、20万円かけてすぐいい音が出るものでもないと思う。アナログの再生に長けた評論家も見当たらない。瀬川冬樹はもういない。先生がいないのである。
以前CD初期にアナログオーディオをこき下ろしてCDの良さを広めようとしたオーディオ評論家、販売店、メーカーを今でも私は許さない。そういった評論家の中で近年にわかにアナログオーディオに手を出す輩がいる。掌返しやがって今からアナログかよ。そんな奴らの言う事に乗ってアナログを始めてはいかんのだ。
だいたいハイレゾオーディオの始まりというのはCDの音への不満を受けたものだろう。CDが完璧ならハイレゾは不要である。そうでない事はソニーなどメーカーもここ数年になってしぶしぶ認めている。ずいぶん長い事彼らは素直では無かった。
極論すれば今からアナログ再生をやるのは金がかかりすぎる。始めてもアナログを誤解したまま終わる事になるだろう。資産が数百億円もある人ならばエアフォースゼロやらコンステレーションオーディオのフォノイコライザーやらアース対策の機器やら揃えてやってみるといい。 10億もかければ相当な音が出るだろうよ。でもアナログのメンテナンスを嫌がらずに習得する気のある人に限るがね。先生はいない。販売店にでも教えてもらえ。
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